本記事は「分散学習×漢字検証シリーズ」の第1章です。
本試みを行った動機
今回の試みを行った主な動機は、「効率的な学習法とは何か」という疑問に対して自分なりに検証してみようと思い立ったからです。
さまざまな学習法を調べる中で、エビデンスに基づいた方法として頻繁に言及されていたのが分散学習でした。記憶の定着においては、一度に大量に学習するよりも、時間を空けて複数回に分けて学習する方が効果的であるとされています。
しかし、それが理論上有効であっても、自分自身にとって有効であるかどうかはわかりません。
漢字、英単語、古文単語など、暗記を要する学習は今後も継続的に発生します。仮に分散学習が自分に適しているのであれば、今後の学習全般に応用できる可能性があります。
したがって、本格的な学習に取り組む前段階として、「分散学習は自分にとって実用的な方法であるか」を検証する必要があると判断しました。
なぜ対象を常用漢字としたのか
分散学習の有効性を検証するにあたって、常用漢字を用いて検証することが今の私にとって最適なのではないかと思いました。
理由は主に二点あります。
第一に、心理的ハードルの低さです。
英単語の場合、中学レベルですら半分程度しか覚えられていない自信がありますが、常用漢字であれば一度は目にしたことのあるものばかりです。読みだけであれば対応可能なものも多く、完全な未知領域から始める学習ではありません。この点で、検証対象として最も優れていると考えました。
第二に、常用漢字は実用性が他に比べて高いことです。
常用漢字は日常生活と密接に関わっており、習得しておいて損になることはないだとうと思っています。少なくとも、英単語を無目的に覚えるよりは、実生活に直結する部分が多いのではないでしょうか。
それに最終的に全てを覚えきれなかったとしても、その過程で蓄積された漢字の知識が無価値になることは日本語話者ならないだろうなと考えました。
以上より、実験対象としての実行可能性と副次的価値の両面から、常用漢字を採用しました。
実践開始時の前提条件
今回の検証は、以下の前提条件のもとで設計しました。
(1)学習時間の上限設定
継続可能性を最優先とし、1日の学習時間は原則として1時間を超えないように設計しました。
これは理論的な最適値ではなく、「自分が今日から始めるとして、無理なく許容できる上限」として設定したものです。
(2)スケジュール設計上の配慮
分散学習において最も負荷が高いのは初回学習であると予測しました。
そのため、初回学習日は他のセットと重ならないよう配置し、「1回目とその復習となる2回目のみ」を行う構成にしました。

また、1日の学習時間制約から、初回以外の学習の重複は最大2つまでとしました。

この設計により、何も学習が発生しない日が生じましたが、その日は間違えた漢字の総復習日に充てることとしました(他に優先事項が生じた場合はそちらを優先する予定でしたが、結果的に総復習を実施しました)。
(3)問題設計
1つの漢字につき1つの熟語を設定し、それを5回に分けて出題しました。
各回で異なる熟語を出題する方法も検討しましたが、分散学習の検証という観点からは、「同一内容を時間間隔を空けて再提示する」方が本質に近いと判断しました。そのため、熟語は固定としました。
語彙拡張という観点では非効率な設計ですが、本試みの目的は語彙量の最大化ではなく、分散学習の効果測定であるため、この点は割り切りました。
(4)意味の扱い
漢字の意味も同時に覚える方が語彙力向上には有効であると考えられますが、初回学習の負担増大を避けるため、原則として意味暗記は必須としませんでした。
ただし、初見の熟語がいくつかあったので、理解補助のため意味を併記し、漢字想起の手がかりを増やす目的で活用しました。
(5)同音異義語への対応
同音異義語が想定される場合は、熟語単体ではなく使用例形式で出題し、文脈から判別できるようにしました。
本試みで検証した問い
本試みの中心的問いは以下の一点です。
分散学習は、本当に有効な学習法と言えるのか。
理論上の有効性ではなく、「自分にとって実行可能かつ持続可能で、成果を実感できる方法か」を検証対象としました。
本章ではその前提条件と設計思想を共有しました。
以降の章では、実践結果とその再設計過程を通して、この問いに対する考察を深めていきます。

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